「儲かっていない会社の共通点」永守重信氏

儲かっていない会社にはいくつか共通点があるのです。

一つは社員の士気が落ちています。

原因をそこの経営者に聞くと、我が社は労働組合が強くてと

いうふうに言い訳をするけれども、私に言わせたら

80%は経営者の責任です。

経営者がしっかりやっていたら労働組合は強くならないと。

きちんと払うものを払っていないし、

職場環境も悪いから労働組合が強くなっているのです。

それから、会社の士気が落ちていると当然工場は汚いですよ。

事務所も汚い。電話の応対がいいかげん。

マナーがなっていない。

つまり6Sができていないのです。

整理、整頓、清潔、清掃、作法、躾の六つのSのことを

我々は6Sと呼んでいるのです。

例えば、ダメな会社に限って便所掃除の人を雇っています。

私は全員辞めさせて他の仕事に回すのです。

社員がやらないとダメですよ。

掃除の人がやってくれると思うから汚すわけで、

自分たちが掃除すれば気をつけて使うのです。

私も自分で使った便所は全部自分で掃除していますし、

新入社員にも一年間便所掃除をさせています。

いまは有名になりましたが、

昔はこんなことをさせるのかと言って

一日で辞める人もいました。

そんな人であれば当社には必要ありません。

便所掃除もできなかったらどうにもならないですよ。

会社が汚いと、ものを粗末にして

あちこちに部品が落ちたままになります。

それからすぐ休むようになるのです。

今日はしんどいとか。

有給休暇を消化してなお休むから、

出勤率が90%を割ってきます。

ということは、20人でものをつくるラインがあったら、

いつも22人置いておかなければならなくなる。

余分に人を採用しなければならなくて生産性が落ちるわけです。

出勤時間にしても、8時半始業だったら、

ギリギリの8時29分に会社に駆け込んでくる。

一応セーフだけれども、そこからロッカーへ行って

着替えてから機械に電源を入れる。

冬だったら10分から20分くらい慣らし運転をしないと

機械の精度が出ませんから、

結局仕事が始まるのは9時になってしまう。

帰りは逆に、終業の30分前にはもう引き揚げ始めている。

朝夕合わせて1時間のロスです。

それを時間いっぱい働くようにするだけで、

10%の赤字が黒字になるのです。

また、儲かっていない会社はだいたい購買が

接待を受けてものを高く買っていますから、

それを妥当な値段に戻せばさらに10%黒字になる。

ですから、私がこれまで買収した会社で

2年目に最高益になっていない会社はないのです。

1番早かったのは日立製作所から譲ってもらった

日本サーボ(現・日本電産サーボ)で、

11か月で創業65年来の最高益になりました。

社長も社員も元のまま。

新製品だってすぐに出るわけがないから何も変わっていない。

それであっという間に最高益です。